先日以下のようなご質問がありましたので、すこし書かせていただきます。
質問)他院では、あまり株を調整しないようですが、何故、アスク井上クリニックでは、株をトリミングするのか。そのメリット、デメリット、使い方をお教えください。
回答)それは誤解です。当院では、極力採取株に触れたくないですし、もともととてもスキニーですのであまり削る必要もありませんが、表皮部分が多く残るとここでキズが汚くなり易いため、この部分だけトリミングしているということです。必要最小限です。 実際この株に対するトリミングや株分けの過程が、FUE、ストリップ法に関わりなく生着率低下の主要な原因の一つであるとこはまちがいありません。アルタスの成績がよくないと聞きますが、これはアルタスの採取時の損傷率が高いのではなく、採取される株が太くそのため全体的なトリミングや株分けをする必要があり、そのときに施術者の技量により、損傷が出てしまうのでしょう。当院での1本毛の作成は、やや小さいパンチで二通り、サイズの小さいほぼ1本毛の細毛を採取するか、またはスプリットの手法で採取するかです、これも株に触れるのは最小限です。
また植え付けのための植え込み穴のサイズを小さくすることは大切です。しかし他院で小さなスリットに入れるために、株をかなりそぎ落としトリミングしているようですが、それに植え付ける技術・手法と株の作成技術とが伴っていないと、酷い生着不良を起こしてしまいます。当院の植え付け法はかなり特殊です。
頭部の傷跡の修正で来られる患者さんの多くは、傷跡の切除縫縮を1回以上受けている方が多いのですが、すべてのケースで、手術前と変わらないか、反って酷くなっている。正確には、そういう患者さんがワラにもすがる思いで、そのワラとして植毛を考え来られるのですが、すでに皮下の脂肪層を含む組織は菲薄化していて、いわゆる毛根が生着できる空間が乏しい。それだけでなく、表面からも、色が白く血流が少ないのが見える。このような場合は、植毛で生着しないこともあります。(ただ、少しでも移植毛が生着した部分の周囲は、なんと多少皮下組織が「再生」してきて、次回の生着が期待できるようになることがある。)
何を言いたいかというと、1回の切除縫縮は、まあ仕方ないかもしれないが、それでも無理なら、再度の切除縫縮は考えず、植毛で目立たないようにすることを考えるべきです。頭皮は他の皮膚とは違い毛が生えてる部分ですので。
さらに、植毛クリニックでも、以前切って植毛してできた傷跡を、特別の縫合法(これはトリコフィティクであるが、これは、美容外科では、フェイスリフトの縫合としては、ずっと以前より普通に行われたものです)を使用すると、更に植毛をする毛も採取出来て、傷もきれいになると謳われていたりしますが、その前の傷が広いのは、すでに頭皮の「伸び」を超えて緊張(元位置に戻ろうとする力)が高いためですから、縫合法を工夫する程度では、結局、切除してさらにその緊張を高めてしまい、もとの傷跡よりきれいになるとは考えられない。
このような、切るストリップテクニックでできた傷跡の修正では、再度切ることは行わず、FUEで採取した毛を移植するか、またはヘアータトゥーをするかです。
(写真)
某有名クリニックでの「最近!」の例
3本の傷跡があり、一番上の傷跡を修正するために
4回目のFUSSを行ったあとの傷跡。
私のHPでも、一度で行える手術の上限はおよそ4000株(10000本)と記載しているのですが、東洋人において、ある程度AGAが進行しているケースでは、これはなかなか難しく、採取出来ても、手術時間は長く、後頭部の密度感は低くなりがちです。
そこで、多くの方で、この4000株(10000本)以上を手術できる可能性として、一つの解決法は、切るFUSSと切らないFUEを併用するハイブリッド法です。各々で2000株なら、切って縫った傷のテンションも低く抑えることができ、ある程度は気にならない程度の傷跡にできることが多く、採取も効率良く、時間も短縮できるのではないかということです。いくらかの切る方法のデメリットに目をつぶれば、数や時間の恩恵があると考えるのです。
以前、FUSSからFUEへの移行期に、ここまでの数ではないですが、ハイブリッド法を行ったことが何度かあり、経過に問題が無いことは確認済みです。