これも時折議論されることがありますが、一言で言えば一長一短がある、ということです。さらにChoi式ニードルも含めて、私自身も、手術毎にどれをどの程度使うか悩むこともあります。現状、80%はスリット、10%Choi式ニードル、10%ホールといったところです。
ホールの利点は、Choi式ニードルでもそうですが、スリットにおける前後の「余分な隙間」がないため、グラフトがぴっちり収まり出血が少なく、高密度に移植が可能ということです。しかし、まずホールはスリットに比べて皮膚へのダメージは大きく、あまりに高密度にすると、点のはずの傷が面となって治って行くこともあるため用心が必要です。そして、既存毛があるときには、そのすべてを避けてホールを作るのはとても難度が高く、手間がかかる。またChoi式では表皮の巻き込みを起こし易いという欠点もある。スリットはなにか高密度が最も可能なように思われがちですが、実際、スリットで、その前後の「余分な隙間」を繋がらないように高密度にすれば「段々畑」状態となることが多く、可能な限り「ハニカム」で行うと自ずと密度に限界がでる。また、マイクロスリットへの移植はやや熟練を必要とし、下手にやるとグラフトの損傷は大きいため、熟練の技術者は必須です。
20年ほど前は、薄毛の治療は、薬か手術かのような議論もありました。世間はなぜかAなのかBなのかと言う議論がでるのですが、完璧な方法というのはなかなか無く、多くはAとBとの良いところを使うことが最良ではないかと考えています。
もう一つのハイブリッド
切るFUSSと切らないFUEを組み合わせるハイブリッドi-SAFEを始めましたが、今日診察致しました患者様から、刈るスタンダードと刈らないアンシェーブンのハイブリッドはどうなのかと、ご質問いただきました。なるほど、自毛で隠せる範囲の刈り上げからとそれを超えるものはアンシェーブンでという考えは、これもまた合理的で効率のいい方法なんだなと思い、今後はこの方法(ハイブリッドアンシェーブンと呼びましょうか)をメニューに加えたいと思います。
一度の手術で移植できる本数(ハイブリッドi-SAFE)
私のHPでも、一度で行える手術の上限はおよそ4000株(10000本)と記載しているのですが、東洋人において、ある程度AGAが進行しているケースでは、これはなかなか難しく、採取出来ても、手術時間は長く、後頭部の密度感は低くなりがちです。
そこで、多くの方で、この4000株(10000本)以上を手術できる可能性として、一つの解決法は、切るFUSSと切らないFUEを併用するハイブリッド法です。各々で2000株なら、切って縫った傷のテンションも低く抑えることができ、ある程度は気にならない程度の傷跡にできることが多く、採取も効率良く、時間も短縮できるのではないかということです。いくらかの切る方法のデメリットに目をつぶれば、数や時間の恩恵があると考えるのです。
以前、FUSSからFUEへの移行期に、ここまでの数ではないですが、ハイブリッド法を行ったことが何度かあり、経過に問題が無いことは確認済みです。