今まで菲薄化した瘢痕、火傷跡の植毛は移植床の無さにより、なかなか満足な結果を出せませんでした。植皮となれば大がかりですし、かといって脂肪注入程度では、これまた、まだまだな感じです。
最近、リジェネラ(hbw®)という器械が日本に入ってきて、その考え方は真皮部分、つまり細胞外マトリックスと繊維芽細胞の塊を粉砕して、(場合によっては脂肪組織由来幹細胞も)注射で打ち込むというものです。いわば、自家真皮粉砕植皮です。閉じた空間への植皮ですので、生着も良く、組織再生もスムーズではないのかと想像します。
本当に、そのような結果を出すことができれば、移植床の再生が期待でき、すなわち菲薄化した瘢痕でも、満足度の高い植毛が可能になるのではと期待しています。
まだ結果を出しての話ではないのですが、諦めていた方も、一度ご相談下さい。
頭部の傷跡の修正で来られる患者さんの多くは、傷跡の切除縫縮を1回以上受けている方が多いのですが、すべてのケースで、手術前と変わらないか、反って酷くなっている。正確には、そういう患者さんがワラにもすがる思いで、そのワラとして植毛を考え来られるのですが、すでに皮下の脂肪層を含む組織は菲薄化していて、いわゆる毛根が生着できる空間が乏しい。それだけでなく、表面からも、色が白く血流が少ないのが見える。このような場合は、植毛で生着しないこともあります。(ただ、少しでも移植毛が生着した部分の周囲は、なんと多少皮下組織が「再生」してきて、次回の生着が期待できるようになることがある。)
何を言いたいかというと、1回の切除縫縮は、まあ仕方ないかもしれないが、それでも無理なら、再度の切除縫縮は考えず、植毛で目立たないようにすることを考えるべきです。頭皮は他の皮膚とは違い毛が生えてる部分ですので。
さらに、植毛クリニックでも、以前切って植毛してできた傷跡を、特別の縫合法(これはトリコフィティクであるが、これは、美容外科では、フェイスリフトの縫合としては、ずっと以前より普通に行われたものです)を使用すると、更に植毛をする毛も採取出来て、傷もきれいになると謳われていたりしますが、その前の傷が広いのは、すでに頭皮の「伸び」を超えて緊張(元位置に戻ろうとする力)が高いためですから、縫合法を工夫する程度では、結局、切除してさらにその緊張を高めてしまい、もとの傷跡よりきれいになるとは考えられない。
このような、切るストリップテクニックでできた傷跡の修正では、再度切ることは行わず、FUEで採取した毛を移植するか、またはヘアータトゥーをするかです。
(写真)
某有名クリニックでの「最近!」の例
3本の傷跡があり、一番上の傷跡を修正するために
4回目のFUSSを行ったあとの傷跡。