先日以下のようなご質問がありましたので、すこし書かせていただきます。
質問)他院では、あまり株を調整しないようですが、何故、アスク井上クリニックでは、株をトリミングするのか。そのメリット、デメリット、使い方をお教えください。
回答)それは誤解です。当院では、極力採取株に触れたくないですし、もともととてもスキニーですのであまり削る必要もありませんが、表皮部分が多く残るとここでキズが汚くなり易いため、この部分だけトリミングしているということです。必要最小限です。 実際この株に対するトリミングや株分けの過程が、FUE、ストリップ法に関わりなく生着率低下の主要な原因の一つであるとこはまちがいありません。アルタスの成績がよくないと聞きますが、これはアルタスの採取時の損傷率が高いのではなく、採取される株が太くそのため全体的なトリミングや株分けをする必要があり、そのときに施術者の技量により、損傷が出てしまうのでしょう。当院での1本毛の作成は、やや小さいパンチで二通り、サイズの小さいほぼ1本毛の細毛を採取するか、またはスプリットの手法で採取するかです、これも株に触れるのは最小限です。
また植え付けのための植え込み穴のサイズを小さくすることは大切です。しかし他院で小さなスリットに入れるために、株をかなりそぎ落としトリミングしているようですが、それに植え付ける技術・手法と株の作成技術とが伴っていないと、酷い生着不良を起こしてしまいます。当院の植え付け法はかなり特殊です。
高密度移植(80株/cm²)が可能な方は、皮脂が少なく、傷の治りに問題がなく、皮膚が健康な状態であることは必要条件です。これがないと、この高密度 移植、ニードルやマイクロスリットを使ってもリッジという盛り上がった傷跡を作りやすく、これが生着不良の原因ともなり、反ってスカスカになることがあり ます。このようなリスクの説明と条件が整ったときに、そして希望があったときに行いますが、そこで使う材料こそネイプヘアです。これをトリミング、場合によっては更に株分けして、とてもスキニーな株をつくり、これを針穴に入れていきます。ただし、現在ネイプヘアや体毛をほぼ損傷なく採取できるのはi-SAFEのみかもしれません。
生え際丸く、額を狭く、M字こめかみ部分がネイプヘア
中央は、おもに通常の1本毛
FUEのメリットに一つに、採取株を選択できるというのがあります。通常は仕上がりのボリュームを考えると、大きめのしっかりした毛のグラフトを選ぶことが多いのですが、女性の生え際の最前列の様な場合は、できるだけ産毛に近いものを選びます。単に一本毛というのではなく、襟足近くの軟毛を選ぶのです。ボリュームという点ではコスパは悪く、また生着率は若干低いような気もしますが、許容範囲内ではないかと思います。それよりも今まで(単に一本毛の硬毛を並べる)にない自然さが得られます。
ちなみに、移植は手植えやエアーインプランターでは、毛根が反転したり折れてしまうことが多く難しいため、まず針で移植予備孔をあけ、Choi式ニードルで静かに置いてくる感じです。現在このChoi式ニードルは日本における植毛ではマイノリティな存在ですが、とても優れたツールです。