今まで菲薄化した瘢痕、火傷跡の植毛は移植床の無さにより、なかなか満足な結果を出せませんでした。植皮となれば大がかりですし、かといって脂肪注入程度では、これまた、まだまだな感じです。
最近、リジェネラ(hbw®)という器械が日本に入ってきて、その考え方は真皮部分、つまり細胞外マトリックスと繊維芽細胞の塊を粉砕して、(場合によっては脂肪組織由来幹細胞も)注射で打ち込むというものです。いわば、自家真皮粉砕植皮です。閉じた空間への植皮ですので、生着も良く、組織再生もスムーズではないのかと想像します。
本当に、そのような結果を出すことができれば、移植床の再生が期待でき、すなわち菲薄化した瘢痕でも、満足度の高い植毛が可能になるのではと期待しています。
まだ結果を出しての話ではないのですが、諦めていた方も、一度ご相談下さい。
女性の相談で多いのは、
頭頂部「分け目」の地肌が透けて、ボリュームがない。
四角く男性的なおでこの生え際を丸くしたい。
の二つになります。今回は頭頂部分け目についてです。
男性の薄毛の原因のトップはAGA男性型脱毛症であり、メカニズムもかなり解明されているため、有効といえる薬もあります。また植毛においても材料の採取として用いる後頭部の毛はAGAを起こさない性質があり、材料としては優れています。これに対して女性の薄毛のトップはびまん性脱毛症の一つであるCTE慢性休止期脱毛症であり、メカニズムも不明な部分が多いため、決定的な治療法がありませんが、やはり手術と薬の併用が基本となります。
ここで言う薬の主たる目的は、毛の成長維持、休止期から成長期への転換です。この目的にあったものは、成長因子グロースファクターGFでしょう(ミノキシジルも最終的には成長因子による効果との研究があります)。GFは週のうち3日以上は行うことが必須です。髪のために使うGFにはほとんど副作用はありませんが、これが高分子タンパク質であるため。内服してもアミノ酸に分解され、塗布では充分吸収されない、注射だと毎日頭部に打つのは難しく可能であっても、それ自体がストレスとなり、CTEの原因となりかねない、かといってよくあるメソセラピーの様に2週に一度では効果が充分でない、など問題がありこの中では、効果は少なくても自宅で塗布するのを基本として、月に数回メソセラピーとして投与が現実的です(GFの他、PRPやオートコラーゲンなど再生メソセラピーもある)。効果が見えるケースでも、ほとんど瘢痕化したような毛穴から発毛すると言うことはやはりなく、そのような部分は確実性が高く副作用を考える必要のない植毛を行っていくことになります。
そのほかの女性の薄毛の薬では、FAGA(女性の男性型脱毛症)にはスピロノラクトンやタガメット、フルタミドを使った男性ホルモンの作用を阻害する方法もありますが、副作用の割には効果が少ない気がします。さらに、女性の薄毛や抜け毛を改善するというサプリ?も処方されることもありますが、副作用はないですが、費用対効果は悪い気がします。
他の育毛のメッセンジャーの一つにプロスタグランジンf2αがあると言われていますが、機序は解明されてはいません。ルミガン、ラティス、グラッシュビスタ(ビマトプロスト)として、まつげ育毛に使用されていて、有意な効果が認められます。しかし頭髪の対するように広範囲使用の安全性は確立されていません。
また、CTEの原因は、自律神経が生まれつき過敏であるなど、神経に関係している証拠もあり、そこではサブスタンスPなるメッセンジャーもあります。こちらに関しては最近、交感神経をブロックするボトックスが有効かもしれないという研究もあります(研究における結果の解釈は私の解釈と異なりますが)。これは今までの治療で十分でないCTEのケースでは試してみてもよい薬と思っています(これはまた、頭からの過剰の汗の防止になる)。
女性の植毛においても、採取には一般に後頭部が使われます。もちろんAGAの場合と異なり、CTEを起こしうるのですが、それでも他の部分に比べると脱毛には多少なりとも強いようです。この比較的強い部分から、慎重にさらに強い毛を持つグラフトを選択して採取しなくてはいけません。そういう意味ではストリップテクニックは適していません。
また、移植においても、侵襲の少ない移植毛穴をあける必要があります。これは既存毛に対する配慮というよりも、その侵襲が新たなストレス、新たな脱毛につながらないようにするためです。また使用するグラフトや移植のデザインにおいても、男性よりさらなる審美性を必要とします。
このようなことを、熟知し熟練した医者が、慎重に行ってはじめて、女性における植毛での満足度を上げることができるのです。男性へ行うと同じ感覚で手術を行えば多くは満足の得られない結果となりかねません。
当院自毛植毛例
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薄毛PRPとは、血液に含まれる血小板を多く含む多血小板血漿のことで、大まかに言えば、採血した血液に抗凝固剤を少し入れ遠心分離した時の上澄み液として得られるものです。有効成分はおそらく含まれるサイトカインや成長因子です。最近は様々な医療領域における安全性の高い再生医療として使用されています。たとえば歯科領域では、、歯周組織再生とくに歯が無くなったために吸収された歯槽骨の再生に盛んに用いられています。美容外科領域でも、皮下組織の再生を期待して、ボリュームだけでなく、シワ、たるみの改善のために用いられています。整形外科でも、筋・腱・骨の再生に用いられています。
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しかし、これによって毛髪が再生されることがあるのかと言えば、毛髪が先ほどの例のような組織ではなく器官として作られているため、かなり難しく、よって、無くなったものはさすがに出てこない。しかし細く短かった毛が、多少ながら成長がみられ、太く長くなることがあるようです。もちろん永久的なものではないため、数週間または数ヶ月おきに繰り返す必要はあります。副作用らしいものはないため、使いやすいですが、その効果は安定していません。
当院での使用方法は、主として、手術中の採取毛の保存液として、また手術後の、直後の傷の治りを良くして、また移植毛の生着をよくするために使用しています。これだけの効果に限定すれば、それなりの結果を出してくれています。その中で、人によっては、既存毛が濃くなることがあるようなのです。
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