採取部分(多くは後頭部)は、移植に使用する株を、その毛を作る工場毎採取するわけですから、移植部には新たな毛の工場が出来、採取部からは工場がなくなり、採取した箇所からは原則毛は生えませんので、手術での採取量が多くなれば多くなるほど、後頭部分の毛の本数は減ります。
時折、ネットでFUEはFUT(正確にはFUSS)に比べて、採取部がスカスカになりやすいという情報が流れていますが、その情報にはあまり合理性を見出せません。
FUTがスカスカになりにくい理由に、頭皮の伸展性の高さをあげてあったりします、すなわち、縦を2センチほど切り取って詰めても、その程度は皮膚が伸びて補ってくれるため密度の低下がおきにくいとあるのです。
伸展性による変化を2つに分けて考えてみましょう。
1,採取部分の上下から伸びて、減少部分を吸収する。
2,採取部分の範囲だけの伸びで減少部分を吸収する。
まず、1ですが、見方を変えれば、これは採取部分の面積が減少するということなります。すなわち、うなじは上昇し、つむじは下降するわけです。髪が多い部分の密度やボリュームの変化は少ないが、その面積は減少することになります。困るのは、うなじが上がるのもやや不自然ですが、特につむじが薄い方の場合はその範囲は広がり下がる訳ですから、後ろから目立つようになってしまいます。
2では、毛穴と毛穴の間隔が開いているか、または切除縫縮した傷跡が目立つことになります。つまり一定の面積のなかで、本数が減少しているのですから、密度は当然少なくなっている。それでも、同一移植株ではFUEがボリューム(密度ではありません)の低下がFUTに比べ多くみえるのは、実際に採取している毛の本数(株数ではなく)と太さの平均値が違うためです。すなわちFUEにおいては、移植部での効果効率を考え、比較的、毛穴当たりに本数が多いもの、また太い毛のものを選択的にとることが多いのですが、FUTではそれは出来ません。あくまで平均値にしか過ぎず、同じ株数の手術でも移植部での効果は圧倒的にFUEが高くなるのですが、それに比例して、採取部ではボリュームが少なくなると言うわけです。もちろん、FUT程度の平均値で採取すれば、その変化は変わらないことになります。