生え際こめかみは1本毛?

いまだなお世界中の植毛医は「生え際は一本毛」と得意気に言っていますが、これに科学的根拠はありません。
生え際は徐々に「細く長くならない毛」になり最終的には産毛となっていくものです。
植毛を考えるとき産毛の植毛はあまり現実的ではないですが、「細く長くならない毛」は植えたいわけです。
その材料は決して一本毛などではなく、当院では「ネイプヘア」を利用しています。
ネイプとはうなじです。
うなじの毛は一本毛か二本毛かという本数の問題ではなく、細く長くならないと言う意味で生え際やこみかみを自然に仕上げるのに適した材料といえます。
難点はこの細い毛をダメージなく引き抜くのは難しく、そのため他院ではここは避けているわけですが、当院ではそれを積極的に使っているというわけです。
一般の毛の切断率が限りなく0にちかい当院の手法においてネイプヘアは有効な材料と言えます。

グラフト作成の実態

以前からたまに他院修正で来院される方で、例えば1000グラフト行ったと言う話だが、採取部分を見ると500グラフト程度しかとってないことがあります。
生えて来ている毛も500グラフト程度なので、実際より多く言われたのかというと、よく植えた部分を見ると、生着が悪かったようにみえます。
つまり確かに1000グラフト植えたことは植えたのでしょう。
これはどう考えられるか、それが株分けです。
採取を3本毛とって、1本毛と2本毛に株分けをして数を増やしているのでしょう。
一見効率のいい方法に見えますが、この株分けが一歩間違うとグラフトに甚大な損傷を与えて、生着率を下げてしまうことにつながります。
当院では株分けは原則禁止、どうしても必要なときも最小限にとどめています。

ネイプを植え込む孔は

ちょっとマニアックになりますが、
孔開けには、ラインスリット、ニードルスリット、マイクロホールがあります。
実際、今世界中で最も使われているのはラインスリットかもしれません。
ただこの細いネイプを植え込むには、ラインスリットにそのまま挿入するとグラフトを傷めてしまうかもしれないので、少し押し開いて挿れることになります。
一方ニードルスリットなら、開けた時点で少し押し開いているため最も好都合です。
結局当院では25ゲージという注射針を使ってニードルスリットを開け、開けたらすぐに挿れるようにしています。
したがって、ラインスリットでサクサク開けるのとはちがい時間がかかりますが、グラフトの損傷を最小限にできます
ちなみによくやられるグラフトの毛根部分を把持して詰め込む方法はグラフトをとても傷めるため当院では禁止しています。

採取部分はどうとるか

多くのクリニックでこの採取部はわりと雑に扱われているところではあり、術後に採取部がはがき状に薄かったり、円形脱毛でもあるのかと思うくらい偏って採取してあったりするのをよく見かけます。
患者さんもそういうものかと諦めているのかもしれませんがそうではないのです。
これは医者がきれいに仕上げようと思う気持ちがあればある程度は防げるリスクなのです。

採取部分の決定で考えることはまず2つ、一つはできるだけ傷跡を分散させるためにも広範囲とする、もう一つはできるだけ狭くして最終部分を隠しやすいようにすることです。
この相反する要素を患者さんとの診察ですり合わせをやっていくことになります。
また、分散することが容易なアンシェーブンという方法がありますが、それでもあまり広範囲だと麻酔の量も増えたりしてやはりすり合わせは必要です。
採取時はできるだけ均等に採取すること心がけ、取りやすいとこからどんどん取るという他院でよく見かける乱獲は絶対にしてはいけないことですね。

また、他院手術後かなり採取部分が悲惨になっている場合もある程度は修正できます。
方法は、やはり移植、ドナーがどうしても足りないならヘアタトゥーとなります。