植毛とは様々な薄毛対策のうちの一つで、薄毛のところに毛を植えて治療します。自毛植毛の場合は生着すれば自分の髪と同じ手入れで生活できる治療法です。工業製品の植毛加工というのもありますが、これは薄毛治療とは異なる技術になります。
植毛による薄毛治療に興味を持つ人の中には、手術や高額な治療費とそのリスクが不安という方もいるのではないでしょうか。その植毛について他の治療法の比較と、主な治療効果とリスク・副作用を詳しく解説します。クリニック・医師を選ぶポイントも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
1.薄毛治療の植毛は「自毛植毛」「人工毛植毛」の二種類
植毛には自分の毛を移植する「自毛植毛」と、人工毛を移植する「人工毛植毛」の二種類あります。
自毛植毛 | 人工毛植毛 | |
---|---|---|
毛の種類 | 後頭部や側頭部など抜けにくい毛を採取 | ポリエステルやナイロン製 |
費用 | ドナーの採取が必要な分高いが、生着後は自毛と同じメンテナンスで済む | 1回の手術費用は自毛植毛より安いが、定期的なメンテナンスが必要な可能性がある |
毛量 | 採取出来る毛量に限りがある | 希望する毛量を植毛可能 |
拒絶反応 | 比較的少ない | 拒絶反応や皮膚トラブルの可能性がある |
見た目 | 自毛と同じで自然 | 自毛と異なるので、慎重に人工毛の種類を選択する必要がある |
日本皮膚科学会による脱毛症診療ガイドライン | B(男性型脱毛症), C1(女性型脱毛症) | D 人工毛植毛術 |
植毛手術でいま主流となっているのは自毛植毛です。拒絶反応が起こりにくく生着後は自毛と同じメンテナンスで済む自毛植毛は、生えてくる髪質も違和感を与えないことから、日本皮膚科学会でB(男性型脱毛症)C1(女性型脱毛症)に推奨されています。植毛には人工毛植毛という選択肢もあるので、まずはそれぞれの治療効果とリスクを解説します。
自毛植毛とはAGAになりにくい自毛を活用する方法
自毛植毛とは後頭部や側頭部などAGAの影響を受けにくい部分から、髪を生み出す毛根細胞を含む皮膚ごと採取しを、薄毛治療する頭頂部やおでこに移植する手術です。
手術の流れについて詳しく説明します。はじめに必要なところに麻酔を行います。その上で後頭部や側頭部などの薄毛になりにくい髪を毛根ごと採取し、植え付けるために株分けをします。次に埋め込むところに埋め込む穴をあけ、穴をあけた頭皮に株を植え込み手術は完了です。その後は生着するのを待ちます。植毛した後は一旦脱毛しますが、おおよそ6ヶ月前後で新しい毛が生えてきます。
植毛した毛根は、AGA(男性型脱毛症)などの影響を受けにくい性質を持っているので、薄くなってしまったところの頭皮でも、自毛植毛した毛根は抜けにくい性質を持っています。
薄毛の原因は様々ですが、男性の脱毛症の多くはAGA(男性型脱毛症)です。
AGAの原因は男性ホルモンの一種DHT(ジヒドロテストステロン)が、毛髪内にある毛母細胞にあるホルモンレセプターと結合し、発毛を抑制する「TGF-β1」を生成することで発症します。
DHTと結びつくホルモンレセプターは、前頭部・頭頂部に多く、側頭部・後頭部は少ないため、AGAの影響を受けにくい側頭部、後頭部の毛髪を、前頭部・頭頂部に植毛するとAGAの影響を受けにくい性質を持ったまま成長します。その結果、AGA治療として自毛植毛は効果的とされています。
またFAGA(女性男性型脱毛症)の治療としても自毛植毛は治療効果が期待できます。
これまで自毛植毛はメスで頭皮を帯状に切除する「FUSS法」(FUT法)が多かったですが、現在の日本ではメスを使わずにドナーとなる毛根細胞を1つずつ採取する「FUE法」が選ばれることが増えています。採取時にメスで切らず済むので、頭皮への負担を軽減できます。
人工毛植毛は化学繊維の人工毛を活用した方法
頭皮に人工毛を植毛するので、希望した毛量を植毛できます。また他の箇所が薄くなることはありません。
この説明だけだとメリットが多いと思われますが、人工植毛は日本皮膚科学会のガイドラインにおいて推奨度が低い施術として扱われています。
要因として人工毛を植毛することで、化学繊維を異物とされた時の拒絶反応の懸念や、人工毛により皮膚トラブルを起こすなど、様々な頭皮トラブルが起きる可能性があるからです。ただし適切な医療機関で施術を受けることに関しては禁止されてはいません。
また当然のことながら人工毛は成長しないので、定期的に植毛する必要があります。見た目も自毛になじまないこともあるので、違和感を覚える方もいらっしゃるかもしれません。
2.自毛植毛の治療効果とリスク
自毛植毛と人工毛植毛の治療効果やリスク・副作用を踏まえて判断すると、人工毛植毛よりも自毛植毛がなぜ推奨されているのかが分かります。
さらに自毛植毛について詳しく治療効果を挙げてみました。自毛植毛にもリスクもありますので、治療効果とリスクをしっかり見極めた上で、薄毛対策方法を選ぶ事をお勧めします。
■自毛植毛の治療効果
自分の髪なので自然
自毛を植毛するので他の髪とも馴染みやすく、自然な仕上がりになります。見た目・手触り感も自毛と同じになります。
手術後に生着さえすれば他の自毛と同じように成長しますので、自然な仕上がりが期待できます。
拒絶反応が起こりにくい
自身の毛組織を移植する自毛植毛は、拒絶反応が起こりにくいのが特徴です。
人工毛植毛はポリエステルなどの人工毛を移植するため、拒絶反応を起こしやすく、感染症を引き起こすこともあります。それら過去の症例・実績を基に自毛植毛が推奨されています。
傷・火傷・レーザー脱毛跡に毛を生やすことも可能
植毛は傷跡などで脱毛してしまったところも治療可能です。
髪が生えなくなった部分に移植し、生着すれば自毛と同じように生えてきます。火傷によって薄毛になった部分も治療できます。
また最近は若い女性が美容する中で、意図せずして脱毛してしまったケースも増えていますが、そういったケースでも自毛植毛で治療可能です。
■自毛植毛のリスク
植毛は薄毛に悩む方にとって魅力的ではありますが、リスクがまったく無いわけではありません。植毛のリスクは主に3つです。
デメリットについてそれぞれ解説していくので、1つずつ見てみましょう。
手術費用が高額
植毛は保険適用外の自由診療にあたるので、全額自己負担で費用が高くなります。
植毛の費用は、移植するグラフト数と施術法によって決まることが多いです。ちなみに
メスを使わずに毛包を採取できるFUE法は、1株あたり950~2000円ほどでできます。
例えば頭頂部の薄毛を治療に750グラフト(髪の毛1500本以上)を植毛するとします。その場合の費用はクリニックよって異なりますが、約71~150万円が掛かります。
髪が生えそろうのに数ヶ月後~半年
植毛した毛は一度脱毛しますが、その後は自毛と同じように新しい髪が生えてきます。
他の自毛と同じようなヘアサイクルで成長期→退行期→休止期→脱毛期の周期で成長していきます。成長期に入れば、そのまま自毛として成長し続けるので安心してください。
自毛植毛に使えるドナー株の本数に限りがある
自毛から植毛出来る株数には限度があります。
自毛植毛で移植できるのは、AGAの影響を受けにくく、薄毛になりにくい後頭部や側頭部に生えている毛です。それらの数には限りがあるので、限られた毛根は計画的に大切に扱う必要があります。
もし大量に植毛したい場合は「FUSS法」(FUT法)の方が向いている術式になりますが、どの術式にするかはクリニックに相談して症状に応じた適切な方法を選んだ方がよいです。
3.植毛と「かつら・増毛」「育毛(医薬部外品の育毛剤)」「発毛(内服薬・外用薬)」との違い
薄毛対策は「植毛」の「自毛植毛」「人工毛植毛」以外に、「かつら・増毛」「育毛(医薬部外品の育毛剤)」「発毛(内服薬・外用薬)」あります。
メリット | デメリット | コスト | |
---|---|---|---|
自毛植毛 | 生着すれば自分の髪の様に生え続ける。 | 診察が必要で、手術費用は高額な外科手術が必要。 | 手術費用は高いが一度の手術で、生着した髪は生え続けるため、長期的にはコストが抑えられるケースもある |
発毛(内服薬・外用薬) | ミノシジル(外用薬)、フィナステリド・デュタステリド(内服薬)は医学的に効果が認められている。 | 個人差はあるが頭皮のかゆみや、循環器系の副作用が報告されている。 | 継続利用が必要でその薬代がかかる。 |
かつら・増毛 | 手軽に薄毛を隠せる | 薄毛が治療されるものではなく、メンテナンスも必要。 | 買い換えが必要なケースもある。 |
育毛(医薬部外品の育毛剤) | 手軽に購入可能で診察も必要ない。 | 効果に個人差がある。 | 継続使用が必要だが低価格。 |
人工毛植毛 | 自毛より安く毛量も自由に増やして植毛出来る。 | 皮膚トラブルの可能性が報告されている。 | 自毛植毛より1回あたりの手術費用は安いが維持費も掛かるケースもある。 |
自毛植毛
この中で、自分の毛を増やすという行為の中では効果が分かりやすいのは、植毛の中の自毛植毛です。増毛や育毛とは違い、植毛は医療行為になるので必ず専門医のいるクリニックで受ける必要があります。
発毛(外用薬・内服薬)
外用薬・内服薬による「投薬治療」により、毛髪を抜けにくくして生育を助けることを指します。「発毛」は、同じく投薬治療により、新たに毛髪を生やすことを言います。
AGAクリニックで受ける治療も「投薬治療」が基本になります。定期的に通院して薬をもらう必要がありますが、気軽に始められることがメリットと言えるでしょう。しかし現在の薬学では毛髪を太く強くして、これ以上薄毛が進行しないようにする効果は期待できますが、髪が生える「発毛」までの効果は個人差があります。
増毛・カツラ
増毛は1本1本の髪に人工毛を編み込み、髪全体にボリュームを出します。目に見える効果が得られるので、すぐに薄毛を隠したいときに最適な方法です。
リスクとしては脱毛とともに増毛も抜けるので、継続的なメンテナンスが必要です。
増毛をすることで薄毛の根本的な解決はできませんが、薄毛を隠すことができます。
カツラやウィッグは増毛よりも手軽に簡単に薄毛対策することが出来ます。オーダーメイドのウィッグは費用と時間は掛かりますが、より自然で好みの髪形にすることが出来ます。
育毛(医薬部外品の育毛剤)
育毛剤は、頭皮に栄養を与えたりすることで、頭皮環境を整える効果が期待できます。頭皮環境が整うと健康的な髪が生えやすくなり、抜け毛防止にもつながります。
育毛剤は頭皮環境を整え抜け毛を予防し、髪がしっかり生える効果が期待できます。
それぞれのメリット・デメリットがありますので、症状に合わせた方法を選ぶのが望ましいです。
また自毛植毛の後の生着率を高めたり、治療を早めるために外用薬・内服薬による「投薬治療」を行うこともあります。最適な治療を組み合わせたクリニックを選ぶと、治療後のアフターケアも安心です。
4.植毛でよくあるQ&A
Q1.植毛の手術が怖い
A1.手術前に麻酔し寝ている間に手術などするので、手術中の痛みを抑えることはできます。ただし麻酔を使用できない方もいるので、医師に事前に相談するようにしましょう。
麻酔が切れた後は鈍い痛みや腫れといった症状が出る場合もあります。術後に処方される痛み止めで緩和できます。
Q2.植毛した毛はちゃんと成長するの?
A2.一般的に植毛し生着した髪の寿命は、他の自分の髪の毛と変わらないです。
そもそも移植するドナーはAGAの影響を受けにくい後頭部や側頭部から採取します。つまり、植毛した部分の髪もまた、AGAの影響を受けにくい性質を持っているのです。
ドナーが生着すれば、植毛した毛はヘアサイクルを繰り返しながら他の髪とともに成長します。生着した後は、半永久的に生え変わりを続けるので、薄毛の悩みは改善が期待できます。ただし生着しなかった毛は成長しないため抜け落ちてしまいます。
Q3.男性・女性の植毛の違いは?
A3.性別によって植毛のやり方に違いはありません。男性も女性も同じように植毛手術が行われます。
しかし女性の薄毛の原因は、男性よりも少し複雑です。
男性の薄毛の原因の多くはAGAでおでこや頭頂部から薄くなり、植毛する箇所が分かりやすいですが、女性は1本1本の毛が細くなり、全体的にボリュームが少なくなったことで薄くなったと感じます。そのため、植毛だけでなく、外用剤からの治療と併せて最適な治療を医師に相談する必要があります。
また男性と女性では生え際の産毛がある方が自然など、違いがありますのでそこも考慮しているクリニックを選ぶ事もポイントです。
女性が植毛するケースは少なくありませんが、男性よりも慎重に判断する必要があります。
もちろん女性にもFAGA(女性男性型脱毛症)や怪我・火傷治療がございますので、その場合は自毛植毛で治療しやすい症状になります。
5.自毛植毛の術式
FUSS法(FUT法・ストリップ法)
主に後頭部から、ドナーとなる複数の毛根細胞を含む皮膚をまとめて採取、その後1つ1つのドナーにメスで切り分けていきます。一度に多くの毛根細胞を採取できるため、医師の施術時間を短縮できるため、FUE法
よりも手術費用は安いです。
FUE(ダイレクト法)
筒状の植毛用パンチを使い、毛根細胞を含む皮膚ごと採取を行います。AGAの影響を受けにくい後頭部から毛根細胞を含む皮膚ごと採取を1つ1つ選んで採取できるのが特徴です。髪を刈り上げないで行えるクリニックもあるので、傷跡も目立ちにくくなります。FUSS法に比べて大量の植毛施術には向かない術式されています。
ハイブリッド植毛
「FUSS法」「FUE法」の良いところを組み合わせたハイブリッド植毛など、クリニックや術式に特徴がありますので、それらを比較した上で決めることをお勧めします。
両方の術式の実績がある医師は限られますので、良いところを組み合わせた施術を希望する場合は、カウンセリングの時にクリニックに確認しておく必要があります。
植毛ロボット
術式ではないですが最近の自毛植毛の選択肢として、植毛ロボットを活用する方法が挙げられます。従来は医療従事者が各工程を行っていましたが、ドナーの採取などを行う植毛ロボットが開発されています。
ロボット植毛を行うメリットとしては、ドナーの採取など対応している工程に関して医師の技術の差が出にくい点があげられます。デメリットとしては側頭部からの採取や、植え込む工程は医師になるなど、対応していない工程は熟練の医師の技術が必要になります。
薄毛の進行によっては、さらにもっと範囲を広げて植毛したいと考えられる方もいるかもしれません。しかし限度を超えて移植することはできないので、ドナー株をロスしないためにも、医師やクリニックの実績を確認して、実績のある植毛専門クリニックを選びましょう。
6.植毛クリニックを選ぶポイント
植毛は医療行為のため、クリニック選びも重要です。高額な費用が掛かり手術を行いますので、信頼できるドクターに相談したいと考える方も少なくないのではないでしょうか。
安心して相談できるクリニックを選ぶためのポイントは、「医師・看護師の経験値とクリニックの実績」「カウンセリング」の2つです。この2つのポイントにおいて、信頼に値するクリニック、ドクターを選びましょう。
必ずカウンセリングを受ける
「医師の実績」と「クリニックの症例」の内容を確認してクリニックを選んだら、必ずカウンセリングを受けましょう。クリニックによっては、カウンセリングで薄毛の症状や予算に合わせた施術方法の提案を受けられるところもあります。
また多くのクリニックはカウンセリング無料ですが、アフターケアと併せてどのぐらい費用が掛かるかも事前に確認しましょう。
複数のクリニックでカウンセリングを受け、カウンセリング内容や治療内容が納得できるクリニックを選ぶことが重要です。治療は長期に及ぶ可能性があるため、医師やカウンセラーとの話しやすさも大切になります。
どのくらい植毛の経験があるのか調べる
クリニックの開業歴や、ホームページなどで公表されている医師の経歴、症例、実績などを調べることがおすすめです。自毛植毛は高度な技術と経験が重要なので、多くの実績を持っている医師を選ぶと安心です。
- 医師の学歴
- 医師の経歴(在籍したクリニックや病院など)
- クリニックの症例・実績
以上について確認をして、慎重にクリニックを選ぶ事をお勧めします。
アスク井上クリニック院長
男性 / 前頭部と頭頂部 / 2,400グラフト / 2,051,500円(税込) | |
手術前 | 術後7か月経過 |
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女性 / 前頭部 / 800グラフト / 819,500円(税込) | |
手術前 | 術後8か月経過 |
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植毛治療は他の薄毛治療と併せて自分に合った方法を探そう
薄毛治療には「自毛植毛」「人工毛植毛」以外に、「かつら・増毛」「育毛(医薬部外品の育毛剤)」「発毛(内服薬・外用薬)」などがあり、それぞれに治療効果とリスク・副作用があります。
植毛治療に興味がある場合は、安全性の高さや仕上がりの良さを考えるなら自毛植毛が優位に立ちますが、最終的に決めるのは自分自身です。それぞれの治療効果とリスク・副作用を理解したうえで医師と相談して決めるようにしましょう。
女性の作家やライターがまとめた書籍が多々ある中、今回は『育毛の心理』(東田雪子)をご紹介いたします。
1.髪の役割
(1)排泄の役割
私たちの体内で消化しきれなかった、毒素などを含む老廃物は、血液に乗って、頭皮下に集結する。この老廃物は、髪に取り込まれ、体の外に運び出される仕組みになっている。
毒物による犯罪検査で、髪の中に含まれた成分によって使用された毒物が特定されるのはこのためである。
老廃物の量が多くなると、髪をつくり出す毛母細胞の働きが悪くなってしまうが、
それでも髪がつくり続けられることに変わりはない。
当たり前のことだが、人が生きている限り、老廃物は生まれる。したがって、髪も人が生きている限り、生える仕組みになっている。
だから、よほど特殊な病でなければ、髪が無くなってしまうことはない。
(2)保温の役割
人の髪の毛は、約10万本といわれている。
この膨大な量の髪の毛は、ちょうど毛糸のセーターやマフラーと同じ原理で、互いの間に空気をとどめ、外気温の変化が直接脳に届かないように、保温材の役和知を果たしている。
私たちの脳は、急激な温度変化に対して、きわめてもろく、過敏である。
たとえば、私が小さい時は、脳溢血で倒れる人の多くが、夜、暖かい室内から寒いトイレに用足しに行った時に発症したといわれていた。その頃の家屋は機密性に乏しくて、廊下やトイレまで暖房が行き届いていなかったため、急激な外気温の変化に脳が対応しきれなかったための発症であったと聞いている。
このような外気温の急激な変化を緩和させて、脳が護るのも、髪が担っている大切な役割なのである。
(3)クッションの役割
私たちが健康な毎日を過ごすためには、体のすべての機能が正常に働かなければならないが、その中でも、命の中枢をつかさどる脳は、小さな傷ひとつも許されない存在である。そのため、完全に骨で覆われている。
人間の体の中で、完全に骨で覆われている器官は、脳だけである。
脳は、熱や衝撃に非常に弱く、その一部でも損傷すると、人体に重大な影響をもたらしてしまうといわれている。
約10万本備わっている髪の毛の表面は、キューティクルと呼ばれる固い組織で覆われている。ちょうど歯の内部が表面のエナメル質によって護られているのと似ている。キューティクルは、バリアーの役割をはたして、一本一本の髪の毛の内部を外部の刺激から守るとともに、髪の水分を保持する役割をはたしている。
カラーリングの際、髪の色が簡単に変えられないのは、このキューティクルのバリアー機能が働くからである。
このキューティクルによって固められた髪の毛は、非常に丈夫で、これを束ねると、ワイヤーロープにも匹敵するほど強靭なものになる。
ワイヤーロープが無かった頃、寺院の鐘を吊り上げるのに、女性の髪の毛でなわれた縄が用いられた事実もある。
一本一本がキューティクルによって固められた髪の毛は、頭蓋骨の上の頭皮にあって互いの間に空気をとどめ、保温の役割とともに、脳を衝撃から護るクッションの役割も果たしている。髪の役割を果たしている。
2.酵素と栄養素があれば髪は育つ
多くの人が、髪が育つには特別な条件があるかのように誤解しているが。赤ちゃんが大人に成長するのに必要な条件と同じで、髪は酸素の栄養素があれば育つ。
しかも、人が成長するためには意識的に栄養素を摂らなければならないが、髪は、放っておいても育つようになっている。
なぜなら、酸素は頭皮の呼吸(※補足あり)と毛細血管を通してまかなわれ、栄養素もまた、毛細血管を通してまかなわれているからである。
つまり、頭皮の状態と毛細血管に問題が無ければ、髪は自然に育つ仕組みになっている。
人が生きて、呼吸をし、食事をしてさえいれば、髪の成長に必要なこの2つの条件は自然に満たされる。
※近年皮膚呼吸の定義について、さまざまな議論が交わされるようになった。中には皮膚呼吸が存在しないとする極論もある。しかし、筆者はエステティシャンとしての経験から、肌に有効成分が浸透するのは、皮膚が呼吸しているからであると確信しているし、この皮膚の呼吸を妨げないことは、健康な肌と髪を保つのに必要不可欠であると考えている。
3.髪は抜けて当たり前
脱毛を恐れる気持ちから、抜け毛を極端に気にする方がいるが、抜け毛はあって当たり前である。
相談者の中にこんな方がいた。
Bさんの頭皮は、私の目には脱毛とは無縁で、どちらかかと言えば、ふさふさとしているのに、
「きのうも200本抜けました」
「もう、2年もの間、毎日200本ずつ抜け続けている」
「抜けるだけで新しい毛は全く生えてきません。このままではハゲになるしかありません。僕の家系なんです。どうすれば良いのか教えてください」
と、鬱々と真剣に訴える。
そこで私が、ひとの髪は約10万本といわれている事実を説明して、
「1年が365日なので、1日200本の髪が、2年間ただ抜け続けると、14万6000本が抜けたことになります。あなたの頭には、十分髪があるし、計算が合わないですね」
と、Bさんの不安と錯覚を指摘すると、めまぐるしく瞳を動かして何やら考え始めた様子で、「計算機を貸してほしい」と言う。
そして、ぶつぶつと小さな声を発しながら、何度も何度も電卓をたたく。
やがて顔をあげると、晴れ晴れとした様子で、
「本当だ。どうして気づかなかったんだろう」と叫びに近い声をあげた。
このBさんのような脱毛不安は、髪が生える仕組みをきちんと知ることによって、うそのように解消されるようだ。
人の髪は、約10万本といわれる。この膨大な量の髪は、頭部全体を覆って、外気温の変化や、外からの衝撃を緩和して、大切な脳を内包する頭部を護る役割を担う。
また、体内の老廃物を排出するために、人が生きている限りつくり続けられ、伸びてゆく。
しかし、髪には寿命がある。髪は際限なく伸び続けるわけではなく、歩行の邪魔にならないように、切らずに放っておいても、その人の腰の辺りまで伸びると自然に抜け落ちることになっている。ショートヘアの場合でも、腰の辺りまで伸びる時間に合わせて抜け落ちる。つまり、抜け毛が発生するのは、自然なことなのである。
この寿命がきた髪が抜け落ちると同時に、新しい髪が生え出る仕組みになっているので、人の髪は常に約10万本を維持できることになっている。
この髪の寿命の(生え変わる期間)を毛周期と呼ぶ。
髪の伸びる早さには個人差があるため、髪の寿命(毛周期)は人によって異なる。
これは髪の伸びが早い人と遅い人では、髪が腰の辺りまで伸びる時間に違いが生じるためで、伸びの早い人で約5年、遅い人で約10年といわれている。
仮に、毛周期を5年と定めて、単純に5年間で10万本の髪が生え替わると仮定した場合
100.000本÷5年(365日×5年=1825日)=約54.79本 となる。
つまり、1日に約55本の髪が抜け落ちる(生え替わる)計算になるが、毎日決まった量が抜け落ちる訳ではなく、暑い夏と寒い冬は少なく、気温の穏やかな春と秋に髪の生え替わりが集中する。
また、シャンプー時に抜け毛が多く確認されるが心配することはない。自然に抜けた髪は抜けると同時に頭から離れ落ちるのではなく、ほとんどの場合たくさんの髪の間に引っかかって、頭部にとどまっている。その髪がシャンプー時にまとめて取れるが、20本~30本程度の抜け毛なら気にすることはない。また、シャンプー行為によって髪が抜けてしまうわけでもない。
4.皮脂は髪を護る大切な成分
200倍スコープで頭皮を映し出すと、様々な形で盛り上がった白い塊が確認できる、
この白い塊は分泌された直後の皮脂である。
職業柄皮脂が分泌される瞬間を目にするチャンスが多々あるが、何度見ても、うれしくてわくわくする。
モリッと一度に出る場合もあれば、夏の入道雲のようにムクムクと出る時もある。
また、ジワーっと出る場合もあったりして、同じ私の頭皮に分泌される皮脂なのに、その多様性にはいつも驚かされる。
この真っ白なかたまりが、汗と混じり合って皮脂膜(保護膜とも呼ばれる)になる。
皮脂から少し離れたところににじみあがった汁が、ゆっくり広がって、その汗が皮脂に届く。すると白い皮脂が一瞬で透明色に変化する。
透明色に変化した皮脂がゆっくりと広がるように見えた次の瞬間、まるで生き物のようにピュッと髪に飛びつき、その髪を包むようにして毛先の方に広がってゆく。
すると髪の表面が鏡のようなつややかな光沢を帯びる。皮脂が保護膜に変わった瞬間である。
その瞬間を見る幸福に巡り合えた時の喜びと感動は。どのような言葉をもっても表現し尽くすことはできない。まさに筆舌に尽くし難いという思いである。
この神秘的な動きが何度も繰り返されて、やがて髪の先まで皮脂膜がゆきわたる。髪が長いと、毛先まで皮脂が届くのに相当な時間を要する。毛先が傷みやすいのはこのためである。
皮脂の出方もいろいろだが、皮脂膜が形成されて広がる様子もまた、さまざまである。
汗と混じり合った皮脂が、そのまま頭皮に広がる場合もある。
また、髪の根本から毛先にむかってゆっくり滑るように広がることもある。
このように、悪玉と誤解されることの多い皮脂は、実は、汗と混じり合って私たちの髪と頭皮を乾燥や細菌の感染などから護ってくれる皮脂膜を形成する、なくてはならない大切な成分である。
私たちの皮膚は、乾燥にとても弱い。空気が乾燥すると肌が荒れるのは、皮脂が傷むからである。また、頭皮が乾燥すると細かなフケが発生するのも、このためである。
この乾燥に弱い皮膚を護っているのも、皮脂によってつくられる、皮脂膜である。
皮脂膜はその役割から保護膜とも呼ばれる。
皮脂は頭皮を含む、私たちの前身から分泌されて保護膜を形成しているのである。
どんなに乾燥した空気の中にあっても。私たちの身体から水分が蒸発してしまわないのは、この、保護膜のおかげなのである。
保護膜の上には、常在菌と呼ばれ菌が生息していて、皮膚についた雑菌を退治して、私たちの身体を病から護っている。
ところが、この常在菌も、乾燥に弱い。この常在菌を乾燥から護っているのもまた、皮脂でつくられる、保護膜なのである。
余談になるが、皮脂で作られる保護膜は、美容界では天然の乳液ともいわれている。
私たちが使用している化粧品は、この保護膜に似せてつくられている。化粧品の究極の目標は、実は、皮脂でつくられた保護膜なのである。
このように皮脂は、私たちの体を乾燥や雑菌から護っている大切な成分であって、決して育毛を妨げる成分ではない。
また巷では、皮脂のかたまりが、育毛剤どの有効成分の浸透を妨げるという風説があるが、決してそのようなことはない。
まるで毛穴をふさいでいるように見える。分泌された直後の皮脂のかたまりは、水でも簡単に洗い落せる、きわめて柔らかなもので、しばらくすると、汗と混じりあって皮脂膜に変わる。
また、皮脂は人体に必要な成分が皮膚から入り込むのを妨げることはない。
たとえば、湯治といわれる行為は、病や傷などの治療を目的に、温泉水に含まれる有効成分を、体内に浸透させるために湯につかる行為だが、全身の皮脂を粗い落とさないまま温泉につかる。
それでも温泉の有効成分が、皮膚を通して吸収される。
このことからも、皮脂が育毛剤の有効成分の浸透を妨げるものではないという事実をお分かりいただけると思う。
後に詳しく述べるが、皮脂を根こそぎ取ろうと、洗浄力の強いシャンプーを使用したり、頭皮を長時間洗うなどの行為は、頭皮に様々なトラブルを引き起こし、かえって脱毛を推進させる結果となるので、絶対にしてはいけない。
5.皮脂が汚れに変わるとき
皮脂はなくてはならない大切な成分であるが、時間の経過とともに空気中の酸素に反応して、徐々に酸化してしまう。
保護膜であった皮脂が酸化してしまうと、粘着力を持つ。粘着力を持った皮脂はその時点で汚れに変わる。そして粘着力を持って汚れに変わった皮脂には空気中のチリやホコリがつきやすくなる。
大きなフケは、酸化してしまった皮脂と古くなった角質(垢)、そして汚れが幾重にも積み重なってできたもので、フケという字を「雲脂」と書くのはそのためである。
頭皮の汚れを毎日きちんと落とさずにいると、このフケは浮き上がることなく頭皮に粘着したままになってしまい、脱毛の大きな原因になる。
また、数日おきのシャンプーでは、頭皮に積もった汚れでかゆみが発生する。
すると、無意識にかゆみのある場所を掻いて、頭皮を傷つけてしまう。
その結果、脱毛が進行することもある。
だから、その日の汚れはその日のうちに洗い落すようにすれば、老化現象がはじまるまではストレスや病気、ケガなどの例外を除いて、基本的に髪と頭皮のトラブルに見舞われることはない。
ただし、くれぐれも使用するシャンプーとコンディショナーの選択と、洗髪方法を間違えないようにしていただきたい。
6.本当は怖いこんなシャンプー方法
入浴時間も惜しんで受験勉強に専念した甲斐あって、希望大学に現役で合格したCさんの頭髪は、まるで洗髪したばかりのように濡れた感じだった、
濡れているように見えるのは「皮脂のせいなんです」と言う。
聞けば、もともと脂性だったCさんは、大学生になって間もない頃、友人たちの間で話題になっていたシャンプーを使用するようになって、洗い上がりのさっぱり感が、脂性と、受験勉強に明け暮れた日々を過去のものにしてくれるように感じたという。
ところがしばらくすると、以前にも増して髪が脂ぎるので、洗髪時間を長くしたところ、しばらく良かったが、また、髪が脂ぎるようになったので、もっと洗髪時間を長くした。そうしてだんだん洗髪時間を長くしたが、脂性がひどくなるので、今では一日に何度も洗髪するようにしているという、
「僕の青春は受験勉強から、シャンプーに変わりました」と、ユーモラスに言うが、瞳は真剣だった。
私が「治りますか?」と、尋ねるCさんに、
皮脂の役割について詳しく説明し、皮脂は髪と頭皮を護るために、洗髪直後に最も多く、急速に分泌されるプロセスを伝えて、Cさんの現状を、
「洗浄力の強いシャンプーを使用したり、シャンプーをつけてこすり洗いの時間が長くなるほど、頭皮の保護機能が働いて、皮脂の分泌量が多くなります。そうすると、これまでよりさらに洗浄力の高いシャンプーで時間をかけて洗うようになり、皮脂の過剰分泌がクセになってしまった結果」と伝えると、
「そうです。本当にその通りでした」と、納得した様子だった。
私はCさんに、私がすすめるシャンプーとコンディショナーを示して、
「今日からこのシャンプーとコンディショナーを使用して、洗髪は一日一回だけにしてください。それから一回の洗髪時間は長くても30秒以内にしてください」と、正しい洗髪法を伝えた。
しかし「皮脂は育毛の大敵」と、間違った風説を信じきって一日数回、長時間の洗髪を風習化して来たCさんにとって「一日一回30秒以内の洗髪」を実行するのは、相当な勇気と強い意志を持ち続ける必要があったようで、
「本当に30秒で皮脂が洗い落せるのでしょうか?」と、何度も電話で訴える。私は、何度も同じ話を繰り返し、
「これ以上悪循環が繰り返されると、やがて頭皮に湿疹ができる。そしてこの湿疹は次第に頭皮下におよび、脱毛の原因になるといったケースも多い」という現実を説明して、正しい洗髪法を実行するようお願いした。Cさんは渋々と言った感じだったが、約一か月後、
「おかげですっかり良くなりました。なんだか悪い夢を見ていたような気がします」
という、感想を交えたうれしい報告が届いた。
Cさんのようなケースは、肌に良い成分で作られたシャンプーとコンディショナーを使用して、正しいシャンプー法を実行すると、1~2ヶ月で皮脂の過剰分泌が治まる。
「30秒の洗髪は、最初は頼りなかったけど、今では当たり前になった。苦労して全く逆のことをしていたのが分かりました」というのが、相談者に共通した感想である。
また、長時間の洗髪以外にも、間違ったシャンプー法を実践して、髪と頭皮に重大なトラブルを招いてしまった相談者も多い。
シャンプーの選択ミスと、シャンプー法の間違いは、さまざまなトラブルを招くだけではなく、脱毛の主原因になってしまう場合もある。
シャンプーの目的、皮脂の役割をきちんと認識して、これらの間違った習慣を一日も早くなおして、脱毛不安などとは無縁な毎日を過ごしていただきたい。
7.慢性ストレスを脱毛
現代はストレスの時代と言われるが、食料の確保が難しかった太古の昔も、今とは違う大きなストレスがあっただろうし、戦が絶えなかった戦国時代の人々のストレスが、今より少なかったとは考えにくい。
したがって、現代社会のストレスによって、脱毛が急増している訳ではないが、ストレスが原因で、薄毛になってしまう方が多いのも事実である。
私たちの血管に分布している交感神経は、血管を収縮させる作用があり、副交感神経は、血管を拡張させる。
人は強いストレスを受けると、交感神経が過剰に働いて血管を収縮させてしまう。強烈なストレスで胃の働きが悪くなってしまうのもこのためである。
頭皮の毛細血管も、このストレスの影響で収縮してしまうので、髪をつくり出す毛母細胞への栄養補給が滞りがちになってしまう。
しかも慢性ストレスの場合は、ストレスを感じるたびに毛細血管が縮んでしまう。
その結果、毛根への栄養が届きにくくなるので、毛母細胞の働きが弱くなり、髪が細くなったり抜けたりして、徐々に薄毛が進行する。
ストレスがなくなれば、髪は徐々にもとの状態に回復するが、ストレスを受ける環境から抜け出せない場合は、年齢に関係なく、育毛剤の力を借りて、毛母細胞への栄養補給を行う必要がある。
ただし、育毛剤は、刺激や血管拡張によって一時的に血流を促進させる目的でつくられたものではなく、必ず栄養補給を目的としてつくられた育毛剤を選択しなければならない
8.十円ハゲはすぐ治る
円形脱毛に代表される急性脱毛は、非常に強いストレスで血管が急激に収縮して、毛根部分から離れてしまい、毛根へ栄養補給が完全に断たれてしまうために現れる一時的な現象である。
強いストレスによる円形脱毛は、ストレスが解消されると同時に血管の収縮も回復するので、髪は早々に蘇生する。おおかたの場合、放っておいても3ヶ月ほどで回復し、脱毛の痕跡は跡形もなく消えてしまう。
この円形脱毛は、急激で非常に強いストレスがあってから役1ヶ月から3ヶ月後に現れる。これは、毛根への栄養補給が途絶えても、毛乳頭と呼ばれるところに栄養素が蓄えられておるため、しばらくの間はその蓄えられた栄養素で髪が留められているからである。
そのため、実際に円形脱毛が現れる頃には、ストレスの有無を指摘されても、本人には思い当たらない(ストレスの自覚がない)場合が多くある。私の経験からいうと、ほとんどの方が、「自分はストレスを感じないタイプ」であると信じ込んでいる。
その方たちにとっては、円形脱毛が現れることによって、「自分はストレスに弱いらしい」という思いが、予想外に大きなストレスになってしまい、脱毛をひどくさせてしまう場合もある。
しかし、円形脱毛は、数ヶ月前の出来事が、実は本人にとって強いストレスであった事実を、本人と周囲の人たちに知らせるための人体の保護システムにすぎないのであって、それほど深刻に考える必要なないと私は考えている。
円形脱毛が現れても、必ず治るもので、決してあわてず、必要以上に余計な手入れをしてはいけない。間違ったケアを施してしまい、かえって頭皮や毛細血管を傷めるなど、新たな脱毛を引き起こすケースも少なくない。
飲み薬や塗り薬の使用も必要ないと考えてよい。
9.産後な脱毛
相談者の方に、40代後半の女性がいた。
茨城から名古屋まで、遠路はるばると訪ねてみえたこの方は、初対面の席で、ななめに構えた様子で、
「別に悩んでいる訳ではないが、興味があって来てみただけ」と、言った。
目鼻立ちのはっきりとした方で、かたくなとも思える態度と言葉遣いに、対応に苦慮した私は、42歳頃に自身の頭に白髪の群生を見つけたときの心境を
「人生が終わったような、大きな衝撃を受けた」と伝え、
「白髪でさえそうだったから、髪が抜け落ちたら、もっとショックでしょうね」
と、水を向けると、ようやく心を開いてくれた。
「昔は、真っ黒で、量も多かった」という、その方の髪が、
「初めての子が生まれて、気がついたら、すっかり薄くなっていた」という。
いわゆる、産後の脱毛である。
「このままではどんどん薄くなってしまう」という危機感から、育毛サロンを手当たり次第に渡り歩いたというその方は、ウィッグ(部分カツラ)をつけていた。
マンションが買えるほどの金額を、育毛のため費やしてしまったというのに、ウィッグをつけなければ人前に出られないほど脱毛が進行してしまったという。
ウィッグをはずしたその方の頭皮は、よく見なければ、まるで毛がないように見えた。私は一目見るなり、思わず、
「ひどい目にあわれましたね」と、口走ってしまったほどであった。そして、
「時間がかかるけど、大丈夫です。お手持ちの育毛器具や、育毛機械は絶対に使わないようにしてください」と伝えると、
「私がバカでした。知らないことは罪ですね。一生懸命働いている主人に申しわけない」と言って泣いた。
産後の脱毛に対する認識不足が招いてしまった、深刻な脱毛であった。
女性だけに見られる産後の脱毛は、ひと言で言ってしまえば、出産にともない急激で強烈なストレスによる一時的な現象にすぎない。
新しい命をこの世に送り出すための想像を絶する強烈な痛みに、数時間、場合によっては数十時間も耐えて、時には死に瀕することさえもある出産は、壮絶な命のバトルである。
産婦にとっては、日頃の生活では決して体験することのない、体力、気力の限界への挑戦でもある。
私自身も、出産を経験して、「家庭内で女性が強くなるのは当然だ。命のやり取りを経験した女性が強くなるのは当たり前で、世のおばさんと呼ばれる方々が怖いもの知らずなのもうなずける」と、思ったくらいである。
そのような壮絶な体験をへた産婦には、出産直後から育児が始まる。2~3時間おきの授乳、おむつ交換と、母体の状態など一切お構いなし、待ったなしである。
しかも、近頃の産婦のほとんどが、子守りの経験がない。
そのうえ、家族の食事、洗濯、掃除などの家事もある。
出産にともなうストレスだけなら、円形脱毛と同様のメカニズムで、産後の1ヶ月~3ヶ月くらいから始まり、放置しておいても自然に解消される。
しかし、産後の脱毛の場合、脱毛現象そのものに対するストレスだけではなく、育児に対するストレスも加わって脱毛を促進させてしまうケースが多い。
産後の脱毛も、円形脱毛も、本人の言葉にできない訴えを周囲に知らせるための信号が形になって現れる。どちらの場合も本来なら放置しておけば、自然に、跡形もなく解消されるが、周囲の理解と協力、思いやりが脱毛解消のカギである。
薄毛や抜け毛が気になり、気を使っても症状が良くならない場合、病院での診察をおすすめいたします。しかし、実際どこの病院で、何科を受診すればいいのか迷う方もいるのではないでしょうか。
女性の薄毛、脱毛症の場合原因から考えることをおすすめします。
■選ぶポイント
婦人科…ホルモンバランスが崩れるもの。妊娠や出産した後、整理不順が起きる場合。
皮膚科…頭皮のトラブルによるもの。フケ、炎症、吹き出物などが起きる場合。
内科…内臓の疾患などによるもの。薄毛、抜け毛以外の身体以上を感じている場合。
精神科…心理的要因に思いあたるふしがあるもの。強いショックやストレスを受けた場合。
*保険は適
用外です。
薄毛や抜け毛の原因でない頭皮のトラブルは医療保険の適応外に該当します。そのため、健康保険は適用されないので、自由診療という扱いになります。しかし、薄毛、抜け毛の原因がどういったものが原因となっているのかは、予測だけでは判断ができません。そのため一度専門家に診てもらい判断してもらうことが大切です。
それでも最初はどこに行けばいいのか分からないと迷ってしまう方は、まずは皮膚科での受診をおすすめします。様々な面から総合して診断してもらえるかと思います。
ホルモンバランスの乱れ、皮膚病、甲状腺系の病気なのか、まずは正しい原因を知ることが大切です。
また、病院などで治療が必要ないと判断されたが治療を進めたいという方は、薄毛治療を専門としているクリニックでカウンセリングを受け治療をするのが良いかと思います。
■女性の薄毛の症状
実際に歳を重ねると段々と抜け毛が増えるのはごく自然のことといえます。ですから、病院で診察をして
も治療は必要がないと判断されることもまれではありません。
病院の診察を受けた方が良いのは急に抜け毛が増えて薄毛になってしまったり突発的に発症してしまう場合等です。
円形脱毛症や他の薬の副作用、ホルモンバランスの乱れ、甲状腺系の病気などが考えられます。
女性は、男性よりも比較的デリケートですから少しのホルモンバランスの乱れが身体にすぐ出てしまう場合がありますので、やはりまずは正しい治療や対策をすすめていきましょう。
女性の脱毛症は様々な要因のものがありますが、今回は脂漏性脱毛症についてまとめたいと思います。
脂漏性脱毛症とはどんな症状なのか?
具体的な症状は、皮脂の分泌が過剰すぎることで発生する脱毛症です。頭皮に皮脂が分泌することは普通のことですが、脂漏性脱毛症の場合、目で見ても確認できる位皮脂が大量に発生するため違う症状として扱われる場合が多いです。皮脂が大量に分泌されることで、毛穴が化膿し、痛みが伴ってしまう場合には早めに医師に診断してもらいましょう。
脂漏性脱毛症の原因
分泌された皮脂が多いことで頭皮の毛穴が塞がれます。これによって皮脂常在菌やダニが繁殖され、炎症、や化膿を引き起こしてしまうことが脂漏性脱毛症による抜け毛の原因となるのです。
皮脂が異常に分泌される理由については、まだ症例集も少なくはっきりと解明されてはいないようです。
一般的には、男性の方が男性ホルモンが多いために皮脂の分泌を活発にする働きがあるのですが、女性と比較すると男性の方が頭皮の分泌量が多いと言われています。
また、一般的に男性ホルモンが多いだけでは脂漏性脱毛症になることは少なく、ホルモンの分泌以上や、突然変異などが関係する場合もあります。
脂漏性脱毛症の特徴
皮膚の分泌が活発な時期に多いと言われており、思春期や成長期の際に起こりやすいと言われています。
対策方法
脂漏性脱毛症が悪化すると、ニキビがひどくなった時のように化膿し、痛みが起きることもあるので、早期に治療を進めておくことが大切です。
また、脂漏性脱毛症には化膿や炎症を抑えるために消炎剤、抗生物質が必要とされており、しっかりと皮膚科の診断を受けることが大切です。また、皮脂を分泌させない工夫も日々の生活を少し変えると効果が出る場合があります。
運動
適度な運動をしましょう。筋トレ、ウォーキングなどを定期的に行うことで代謝機能が高まります。
食生活の見直し
脂っこいものは控え、ビタミンB群が多くふくまれている野菜を摂取したり、栄養バランを整えるのも大切です。また、珈琲、アルコールなどの刺激が強いものも控えめにしましょう。
皮脂が少ない女性
女性は、比較的男性よりも皮脂が少ないので男性より発症しにくいのですが。妊娠や出産やホルモンバランスが乱れ、加齢によりエストロゲンが減少するおことで、女性の脂性になってしまうこともあります。皮脂は、洗い流したからといって減るものではありません。必要以上に洗浄してしまうと頭皮を保護するために必要な分も無くなってしまうために分泌量が多くなってしまいます。ですから、皮脂は適度に洗い流し、清潔に保つことが一番の対策でしょう。
シャンプーの見直しを
市販のシャンプーは、洗浄力が強いものが多く販売されています。そういったシャンプーは必要な皮脂まで除去してしまうので合成面活性剤を使用していないシャンプーを選びましょう。そして、シャンプーの順番にも気を使ってみてください。
まず、湯船にしばらく浸かり頭皮の毛穴をしっかりと開かせてからお湯で頭皮の汚れを落とします。その後に、泡立てたシャンプーで洗います。その後洗い流す際にはシャンプー成分が頭皮に残らないようにすることが大切です。洗っても、頭皮がべとついてしまう場合には1日1回、2日に1回程度シャンプーを2回2度洗いを試してみてください。
脂漏性脱毛症に関して詳しく知りたい方はこちら
女性の脱毛症は色々な種類がありますが、その中のひとつにひこう性脱毛症があります。この脱毛症は、脂漏性脱毛症と併発することも多いと言われています。
今回はこの2つの脱毛症についてまとめてみたいと思います。
ひこう性脱毛症とは
症状は、頭皮が炎症しそれが原因となり育毛、発毛がしずらくなるといわれています。特徴としては、頭皮にかさぶたができ、フケとなり、それが毛穴に詰まることで育毛、発毛を邪魔するのです。フケが毛穴に詰まらえてしまい、無理にとろうとすると頭皮に傷が付き、炎症が悪化してしまう可能性があります。そのため、この脱毛症はきちんと正しい方法で治していく必要があるのです。また、かゆみも併発してしまいます。頭皮がかゆいがために耐え切れずに頭皮を掻いてしまうとさらにダメージを受けてしまうのです。
原因は?
頭皮に発生したフケがひこう性脱毛症の原因だといわれています。頭皮にフケが発生し、毛穴に詰まると菌が繁殖して炎症に繋がってしまいます。そこから脱毛に繋がってしまうのです。
そもそも何故フケが大量発生してしまうのでしょうか。原因と言われているひとつに「頭皮を清潔にしようとしすぎている」ことがあげられます。頭皮を清潔に保とうとしすぎてシャンプーをしすぎてしまうことで頭皮が乾燥してしまい、フケが発生しやすい状態を作ってしまいます。頭皮が乾燥するとフケが発生しやすいので、清潔に保とうとしても逆効果になってしまうのです。また、もうひとつあげるとしたら、ホルモンバランスの異常も原因だと言われています。ストレスを溜めること、生活が不規則、アルコールの摂りすぎなどがホルモンバランスが崩れる原因だと言われています。
ひこう性脱毛症の治療について
ひこう性脱毛症の疑いがある場合には、きちんと病院で診察、治療してもらうことが重要です。実際に、医師からひこう性脱毛症と診断された場合には、処方される薬にはステロイドが含まれたものが多いです。炎症を抑えるためにステロイドが処方されますが、その炎症を抑えると症状が軽くなることがあります。また、同時にかゆみ止めも処方される場合があります。しかし、ひこう性脱毛症は薬を使用したから必ず治るというわけでありません。毎日の生活を自分から整えるよう意識することもとても重要なのです。
シャンプーで過度に洗いすぎるのを抑えたり、いつも使用しているシャンプ―を変えてみるのもおすすめです。変えるとしたら刺激の少ないものにすると頭皮へのダメージも少なくて済むかと思います。ひこう性脱毛症は、早期発見すればするほど治療の時間も短縮が可能です。
最近、フケが増えてきたなと感じた場合にはなるべく早く医師に診てもらうことをおすすめします。
女性の薄毛で悩んでいる方も昔より多くみられるようになってきました。これには、生活環境や食生活、生活スタイル、遺伝的なものから精神的なものまでさまざまですが、今回は、女性の脱毛症である牽引脱毛症について説明していきたいと思います。
牽引脱毛症とは?
薄毛や脱毛の原因などは様々な種類があり、遺伝、体質がそうであった場合が多いですが、中には自分の髪型が原因で引き起こされてしまう場合もあることをおご存知でしょうか?牽引脱毛症は、最近日本人の女性の間で増えてきている脱毛症のことですが、ほとんどの場合女性の脱毛症として挙げられているんです。
これの大きな原因は、髪の毛が引っ張られすぎている、ことによるものだと言われています。例えば、ポニーテールは毛髪を束ねて後ろで結いますが、この髪形も頭皮に大きなダメージを与えてしまいます。また、ポニーテールよりも頭皮にダメージが大きいのがエクステです。エクステは、常に毛髪が引っ張られている状態のためダメージが大きくなってしまうんです。
それ以外にも以下のような原因があります。
牽引性脱毛症の原因
ポニーテール
髪の毛を後ろに引っ張られている状態のことです。また、髪の毛を強く束束ねることで頭皮へのダメージが大きくなります。
エクステンション
常に頭皮が引っ張られていて皮膚がポニーテールよりも倍以上の負担がかかります。
三つ編み、編み込み
髪を引っ張り、さらにそこに編み込みをしているため抜け毛が多くなります。もし三つ編みをする場合には、強く引っ張り過ぎないことが大切です。
お団子頭
お団子の部分が頭皮に重い負担をかけ、毛髪が引っ張られてしまうのが問題です。
ヘアアイロンやコテ
ヘアアイロンを利用することで髪をストレートや巻き髪にすることが可能ですがはさみながらという点で、刺激を頭皮が受け抜け毛が多くなります。
分け目をいつも同じにする
分け目がずっと同じ方は気が付かないうちに負担が溜まっていきます。また、髪をかきあげるのも要注意。その書き上げた箇所がどんどん薄くなってしまいます。
対策方法
①ヘアスタイルを変える
牽引性脱毛症の対策のひとつには、違うヘアスタイルに変えることが大切だと言われています。どうしても学校や仕事の都合などでどうしても毛髪を結ばなければいないときには、できるだけ短い時間にすることが大切です。また、脱毛症の中でも牽引性脱毛症は症状が軽いため、頭皮や毛髪に負担にならないように少し工夫するだけでも自然に回復する可能性も高いです。
②頭皮マッサージをする
牽引脱毛症になってしまう方の多くには頭皮の血行が悪くなり頭皮が固い方が多く見られます。そうならないために、頭皮マッサージが重要です。頭皮がかたい。のは、血行が悪いというメッセージになりますから毛髪が育つのに必要な栄養分が頭皮まで行き届いていない可能性があるんです。頭皮マッサージは気軽にできますので、試してみてはいかがでしょうか。