誰でも分かる自毛植毛の歴史の後編です。前篇では自毛植毛の歴史が古いこと、日本の技術が先進的だったこと、パンチグラフトからマイクログラフトに変わり、植毛は効率よりも美しさを求める方向となったことまでを紹介しました。
さて、自毛植毛の歴史、後編へと進んでいきます。後編では、いよいよ現代でもメジャーなメスを使った植毛法であるFUT法、メスを使わないFUE法が登場します。
目次
自毛植毛はFUTが世界のスタンダードに
FUT法は1995年に海外で提唱され、現在でも広く普及している術式です。FUTの『FU』とはフォリキュラー・ユニットの略称で、フォリキュラーとは『毛根』のことです。1983年にヘッディントン先生によって初めて発表された概念です。植毛で実用化されたのは1995年、毛根付きの頭皮を顕微鏡でFU単位に株分けしたのが始まりです。
髪の毛は毛穴から生えています。一つの毛穴には1〜4本の太い髪、1〜2本の産毛があり、皮脂腺、起立筋等と構成されています。この元からある自然な単位で株分けを行って、無毛の場所に再分配するというのがFUTの流れです。マイクログラフトでも1株に1〜3本という小さな株が使われていましたが、これは株のサイズが小さいというだけでFUの単位とはかぎりませんでした。
FUTは全ての株分けをFU単位で顕微鏡を使い正確に行う、マルチブレードナイフは使用しないというのが特徴です。
これにより限りなく自然な自毛植毛が可能になりました。広範囲に毛根を採取できるため、密度で悩む方の疑問も解消しています。
FUTとは
メスを使い後頭部と側頭部の髪の毛を採取。前頭部や頭頂部など気になる部分に移植していく術式です。まず麻酔をかけドナーと呼ばれる毛根付きの皮膚を切り取ります。ドナーは帯状になっており、それを顕微鏡を使って細かく分けていきます。
ちなみに髪の毛は1セット1本ばかりではありません。1-4本の太い毛や1-3本の産毛が連なって1セットという状態も多く、それが自然な状態なので、忠実に株分けし移植していきます。
それから移植箇所にスリットという切り込みのような穴を開けます。ここが新しい毛穴となります。株分けし終わった毛根を順番に植え付けていくのです。
スリットの作業は一連の施術の中で大事なポイントとなります。浅すぎると定着する前に移植毛が取れてしまう恐れがあり、深すぎても炎症を起こしたり、ピットスカーと呼ばれるブツブツした跡ができる可能性が出てきます。この作業はもちろん医師が行います。医師の技量がものをいう場面であります。その後、毛根を植え付けていきます。
FUTは自毛植毛の中でもコストパフォーマンスに優れていますが、メスを使うため後頭部に線のような傷が残ります。一度にたくさん植えたいという方にはオススメですが、短髪を楽しみたいという方には不向きでしょう。
自毛植毛の主流FUE
世界ではいまだFUTが主流ですが、技術の進歩に伴い日本ではメスを使わないFUEがメジャーです。1株ごと毛包を採取するため、大きな傷が残らないメリットがあります。
FUEの毛根の採取場所はFUTと同じく、後頭部と側頭部です。採取方法が異なります。
FUEは細い専用のパンチを使って毛包を引っ張り出します。要するに髪の毛を抜くということです。FUTはメスを使って一気に取り出しますが、こちらは毛包ごとですので、より繊細な作業となります。医師と看護師の高い技術力が必要だということです。
移植毛は一時的に培養液などに浸し保存。その間前頭部などにスリットを入れていきます。※クリニックにより異なります。一般的な方法を紹介しています。
その後、髪を植え付けていくのですがここでの方法はFUTと同じになります。
FUEは一度に大量に移植するということに不向きですが、後頭部の傷を小さく出来るなど美しく仕上げることができるという大きなメリットがあります。
まとめ
このように植毛技術は日々進化し新しい技術が生まれています。現在は植毛ロボットも活躍中。10年後にはまったく予想もつかない進化を遂げているかもしれません。
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